【マッチングワールド株式会社 代表取締役 町田博 独占インタビュー】人のやらないことをやる ~マッチングワールドの過去、現在そして未来~

■目次

1)過剰在庫と必要在庫を人とITで結ぶマッチングシステム
2)「在庫の流動化」に懸けた20年
3)経営者・町田博の生き方・ビジネス哲学に迫る
4)マッチングワールドのこれから

 

1)過剰在庫と必要在庫を人とITで結ぶマッチングシステム

テレビゲームのソフトや本体、トレーディングカードなどの過剰在庫を売りたい人と、必要在庫を買いたい人をつなぐ「M-マッチングシステム」で急成長を遂げてきました。

町田:「M-マッチングシステム」は、ゲーム業界を中心とする店舗や流通業者、メーカーが抱える余剰在庫を、インターネットを使い、完全匿名でお互いに好きな価格で売買し合える会員制の流通システムです。

当社は2001年の設立以来、「M-マッチングシステム」を開発・提供し、ゲーム業界の在庫の流動に特化し成長を続けてきました。

私は、パソコンもインターネットもない頃から、在庫マッチングサービスを手がけてきました。会員を募り、売り手側の企業が出品した商品の情報を、買い手側の企業に提供してきましたが、あるお客様にとっての不良在庫は、別のお客様が買いたいと思っている必要在庫であるかもしれないのです。

より多くのお客様にこうした商品の在庫情報を提供することで、不良在庫は必要在庫に変わる可能性があります。

当初は紙ベースでファックスを利用してマッチングを行っていましたが、技術革新が進むなか、インターネットを活用することで、当社のマッチングシステムは地域性の垣根を跳び越え、日本全国はもちろん、海外にも広くサービスを展開しています。

現在、国内外の売り手・買い手を合わせて約6,000社が「M-マッチングシステム」に登録し、とくに海外のバイヤーは800社を超えるまでに成長しました。日本橋本社の倉庫でお取り扱いしている会員企業の”在庫”は123万点以上で(うち9割がゲーム・おもちゃ関連)、「M-マッチングシステム」で売買が成立したあと、検品済みの商品を世界中に配送しています。

マッチングサービスを広げていこうと思ったきっかけは何ですか?

町田:多くの店舗や流通業者、メーカーさんが在庫品の処分に苦労されていると思いますが、私自身も大量の商品在庫を抱えて倒産した経験があるのです。マッチングサービスの必要性を、私自身が一番実感しています。

当時、負債総額が40数億円にも上る倒産を経験し、私は業界に迷惑をかけました。「気の毒だが、町田さんは二度と復活できないだろう」と言われても仕方がなかったし、実際、私自身も「この業界にはもういられない」と思っていましたね。

ところが幸いなことに、会社倒産後に浪人時代を経て、私は友人が始めたゲーム問屋に誘われました。数年後に、そのゲーム問屋を閉めることになったのですが、私は同社の東京支店をもらって、ふたたび起業することができたのです。

そんなあるとき、お客様の小売店から相談を受けました。当時はソニーの「プレステ」が発売された頃で、「ソニーが参入してからゲームの商品単価が上がったのはいいのですが、高くなった商品が売れ残ると損が拡大します。売れ残った商品を見切って値引き販売すると大損をするので、そこを何とかできませんか」というのです。

そこで、すでにファックスで行っていた在庫情報の提供サービスをさらに拡充し、より多くのお客様が安価なコストで参加できるようなマッチングサービスを構築することを思い立ちました。これが、業界に対しての恩返しになるのではないかと思ったのです。

いま副業・兼業ブームに注目している理由は何ですか?

町田:最近、時代背景が変化し、国も「働き方改革」の一環として副業・兼業を推進するようになりましたが、副業・兼業ブームは当社にとって、マッチングサービス以上のチャンスになる可能性があると考えています。

そのため副業・兼業事業者やフリーランスが活躍できる環境を整え、モチベーションの高い人材が数多く集まってくるようになれば、彼らが自ら動いて販路を拡大し、商品を一生懸命に売ってくれる頼もしい戦力になると、私たちは期待しているのです。

そこで、ゲーム機器本体やソフトの転売を長く手がけてきた当社が、ネットでの販売を行いたい人たちを支援していこうと考えました。

当社では、ゲームやおもちゃの販売を仕事にしたい副業・兼業事業者やフリーランスに向けて、「M-マッチングシステム」を通じて商品を仕入れ、すぐにビジネスを始めることができるプラットフォームを提供しています。

副業・兼業、フリーランス向けの決済サービス「マッチング・ペイ」も用意しています。

町田:副業・兼業事業者やフリーランスの方には、資金力に不安があることが少なくありません。そこで2018年4月にオリエントコーポレーションと協業し、「マッチング・ペイ」サービスを開始しました。

これは、与信審査を行ったうえで、「M-マッチングシステム」を通じた100~500万円の仕入れ枠を提供するサービスで、支払条件は月末締め翌月27日払いとなり、商品代金の支払がとても楽になります。金利負担は当社で行うので、仕入をされる方にはメリットが高いサービスだと思います。私たちも昔、支払関係で非常に苦労した経験がありますが、とくに現金払いの場合、手元に現金がなければ、売れ筋商品を確保することもままなりません。そこで商材の提供に加えて、資金面でも副業・兼業事業者やフリーランスの方を支援していこうと考えたわけです。

最近では、「M-マッチングシステム」に新規に登録した副業・兼業事業者やフリーランスの方の約7割が、「マッチング・ペイ」への申し込みを希望しています。

日本で初めてネット通販における商品保証サービスを導入した理由は?

町田:副業・兼業を始めるにあたり、資金はもちろん、商品に対する苦情への対応も非常に頭の痛い問題です。とくにネット販売の場合、いったんネットショップに上がってしまった商品が本物かどうかや商品の入手経路、商品の状態などを、エンドユーザーが確認することはほとんど不可能です。

その点、商品を購入するエンドユーザーとしては、ネットショップで買った商品に対する「お墨付き」が何かあるといいですよね。

そこで私たちは、商品管理・検品から発送までを一貫して請け負い、入荷時と出荷時の2回にわたって検品を実施し、商材の保証を行っています。当サービスには「商品の番人」という名前をつけました。

有力ECサイトでは、商品のマッチングはしますが、商品の保証は行いません。したがって厳密に言えば、それらのECサイトで出品されている商品が本物であるかどうか、誰もわからないことになります。

そこで、私たちは専業であるゲーム関連商材については自ら保証を行い、「M-マッチングシステム」に商品を出品していただくお客様からも、「ここに商品を出せば返品がなくてすむ」というメリットを提供していきたいと思います。日本で初めて、ネット通販で商品の保証を実現したサービスだという点を広くアピールしていきたいですね。

2018年5月には、副業・兼業事業者やフリーランスに向けて、商品に関する正しい知識や検品方法を解説し、副業や兼業の成功に役立つさまざまなノウハウを伝授するほか、「M-マッチングシステム」における最新の売れ筋商品ランキングなどを提供する卸情報サイト「商品の番人」も開設しました。

携帯販売店向けの新事業もスタートしました。

町田:2018年8月から、スマートフォン向けのガラスコーティング剤「ピカプロDX」の取扱を開始しました。更に、コロナ禍でニーズが高まっている「抗菌力」を追加した、新しい「PIKAPRO DX(ピカプロディーエックス)」も2020年秋に正式発売を開始しました。ウイルスは「硬くて」「都度消毒されない」箇所に残留します。例えば、ダイヤモンドプリンセス号では「ドアノブ」「電話機」など、大江戸線では「水道の蛇口」などアルコール消毒を都度実施しないところでウィルスの残留が報告されています。PIKAPRO DXは、こうした箇所をブロックするために開発され、SIAA(抗菌製品技術協議会)の認証も取得しております。

消費者向けの施工単価(施工費+材料費)は従来のガラスコーティングと変わらず2,000~4,000円/1面程度。スマートフォンだけでなく、ゲーム機、タブレット端末、PCなど種類を選ばずに施工が可能で、施工時間がおよそ5分と短い、などのメリットがあります。概ね90%以上の粗利を確保できるため、或るショップでは、コロナ禍のはじめての緊急事態宣言が開けた直後に、店舗粗利を約100万円嵩上げすることができました。

店舗でスマートフォンのガラスコーティングを行っている企業に商品を提供していくほか、場所も時間も選ばず内職のように作業できることを売りにして、副業・兼業事業者の方にもお勧めしていきたいと思います。

「M-マッチングシステム」はどんな可能性を秘めていますか?

町田:既存のビジネスを革新したり効率化するための仕組みを作るには、その業界やビジネスそのものがよくわかっていないといけません。

業界のニーズを熟知し、商売の基本に立ち返ればこそ、商品をネットで購入した人が「おかしい、これは返品しよう」と思ったときにも対応できるように、「返品の仕組みがなければ作ればいいではないか」という発想もできるわけです。

また、商社はたとえばゲームソフトを1アイテムにつき何千本も取り扱いますが、中小企業やフリーランスは1品1品が勝負。その点、「M-マッチングシステム」には、商品が1品1品入庫してから出庫するまでの流れやプロセス、エッセンスがすべて詰まっています。

その意味で、当社の「M-マッチングシステム」は本当の意味で中小企業のビジネスの流れをおさえており、広いジャンルの商品に対応することが可能です。

実際、「M-マッチングシステム」ではゲーム関連製品以外にも、おもちゃやスマートフォン、音楽・映像、雑貨、食品の仕入れサービスを提供しており、さらに文具や建材の仕入れも可能。会員からの商品ジャンルの追加リクエストも随時受け付けています。

「M-マッチングシステム」の可能性は、これからさらに広がっていくでしょう。
 

2)「在庫の流動化」に懸けた20年

そもそも町田社長はどんなキャリアを歩んできたのですか?

町田:私は、鹿児島市にある鹿児島市立商業高等学校を卒業したあと、1968年に近畿電気通信局(現・NTT)に入局しました。そこから現金問屋に転職したのが、私の人生における一番の転機で、この商売の原点です。

同局に入局してから、私は営業部門に配属されたのですが、高卒だということもあり、将来に不安を感じていました。もう辞めようと思ったときに、日経という現金問屋に野球チームがあることを知ったんです。私は野球が大好きだったので、「野球チームがあるならそこに入ろう」と思ったのですが、結果的にそれが最大の人生の転機になりました。

日経に入ってみると、同社の社長が非常に優秀な方で、私は商品の流れや原価の仕組みを始め、流通業についてさまざまなことを勉強させてもらいました。それが、今の商売にも大きく役立っているのですが、これもひとえに同社の社長のお陰です。

ちなみに当時、日経の向かい側にドウシシャという現金問屋がありましたが、同社は今ではプライベートブランド商品などの企画・開発・販売などを手がける東証一部上場企業。また当時、リーダーという現金問屋がありましたが、同社は現在のドンキホーテの前身になった会社です。

当時、日経の社長は全国から優秀な人材を営業部門に多数引っ張ってきていましたが、朝礼のときにいた人が、昼間にはいなくなっていることも珍しくなかったですね。会社の机に座って朝から晩まで電話営業をしていましたが、私は話が下手で電話営業にはまったく向かないんです。そこで「言葉がだめなら文字で行こう」と考え、紙で商品の資料を作って毎日、毎夜ファックスを流していました。

現金問屋を辞めて起業し、テレビゲームの卸売を始めました。

町田:1985年に日経を辞め、今の事業のルーツとなる光陽という会社を設立しました。安い商品を探して仕入れ、転売するという商売をしていたわけですが、ある年の年末に、任天堂の製品を扱っている問屋さんから「この商材を買ってほしい」という依頼があったのです。それが当時、人気が出始めていた「ファミコン」でした。

いわゆるバッタ屋は、基本的にはどこかで安い商品を見つけてきて、その商品が入荷して初めて商売ができます。つまりモノが入って来ないと商売ができません。ところが「ファミコン」は商品が入ってくる前に予約注文がもらえるので数字が安定するため、テレビゲーム本体やソフトをメインに取り扱うようになったのです。

営業活動にも力を入れ、全営業マンに1台ファックスを支給して自由に使わせ、顧客に商品情報の案内を行うことで業績が伸びていきました。情報を発信しなければ注文は来ないというのが私の信条で、ジャスコやダイエーといった大手量販店にも絶えず商品情報を流していたことが功を奏し、実際に取引も決まりました。

それと同時に、個人の業績に応じた報奨金を支払うことで、営業マンのやる気が高まり、トントン拍子に売上が増えていったのです。

当初から先進的な取り組みを行ってきたのですね。

町田:当時まだ誰も手がけていない営業戦略として、日本経済新聞や日経流通新聞にゲームの広告を4段枠で載せました。商品の写真をつけて、値段も入れて広告を出したら、電話営業をするよりもずっとお客さんが増えたんです。

私たちがこういう宣伝方法を採ったのも、昔は玩具の流通は地域ごとにカベがあり、交流がなかったから。当時ゲームメーカーは、北海道地区ならこの一次問屋、東北地区ならここの問屋、と決めて商品を配分していたわけです。

そこで、地域ごとにカベのあった従来の流通を壊し、ある地域で余っているものを買ったり、ある地域で不足しているものを転売しようと考えました。実際に、地域によってある商品が過剰在庫になっていたり、逆に、別の地域でそれが潜在的な必要在庫になっているといったことが起きていたのです。

これをうまく利用し、地域を攻めていこうと考えました。仙台支店、東京支店、大阪支店、九州支店をつくり、支店攻勢をかけて勝負に出たのです。支店単独では地域の有力業者に負けてしまうかもしれませんが、各地の過剰在庫と必要在庫をうまくさばくことで総合的には勝てるという勝算がありました。

実際に支店攻勢をかけたことが功を奏し、売上が右肩上がりで伸びていったのです。

ところが大量の在庫を抱え、会社が黒字倒産してしまいます。

町田:支店網を広げていくうえで重要なのは、本社にストックしてある在庫を、各地区のニーズに合わせていかにスムーズ流動させるかということです。そこで、本社にある在庫を必要に応じて各支店に融通するために、当時まだ日本に数台しかなかったIBMのホストコンピュータを導入して管理を行うことにしました。

ところが、システムの本稼働が年末を越し、システム稼働前の数カ月分の在庫データが上がってこなかったのです。

当時の年商は、180~200億円に達していました。テレビゲーム市場全体の市場規模が約2300億円だったので、10%に近いシェアを持っていたことになります。つまり全メーカーが販売する製品の約1割を私たちが買っていたわけで、バイヤーたちはさぞかし鼻が高かったことでしょう。私たち経営陣も安心して任せきりにしていたので、うかつなことに、大量の買い注文が出ていたことに気がつきませんでした。

年が明け、出社してコンピュータを動かしてみたら、1アイテム数万個という大量の買い注文がいくつも出ていて、結果的に合計46億円に上る不良在庫を抱えてしまったのです。 商品の返品もできず、資金繰りにも詰まり、会社は倒産。それから私は浪人の時代に入りました。

その後まもなく復活を遂げ、新会社を設立しました。

町田:それからしばらくして、ある友人が始めたゲーム問屋に入って数年間一生懸命頑張りました。ところが、事情があってその会社を閉めることになったため、私は同社の東京支店をもらい、プランニングオフィスアシストを1999年に設立しました。社員5名で事業を始めたのですが、2年が経過した頃から売上が伸び、大きな事務所にも移ることができたのです。

当時、私たちはすでにファックスで在庫マッチングサービスを行っていました。自社が保有しているゲーム機本体やソフトなどの在庫情報を提供したい業者を募り、ファックスで多くの買い手企業に情報を発信していたのです。基本的には、私が以前興した光陽という会社で行っていたファックスによる在庫情報提供サービスと同じです。

私は毎週土日に膨大な資料を持ち帰り、徹夜して、どんなジャンルのどの商品が、どれぐらいの価格で出品されているかを整理し、B4のレポート用紙5枚ぐらいに在庫情報をまとめて、手書きで原稿を作成しました。

そうしたなか、私たちの在庫マッチングサービスに在庫情報を提供してくださっていたある企業から、「来年の春に上場するので、うちに来てほしい」と誘われたのです。

やはり上場は中小企業の夢ですから、私の心も大きく動きました。「プレステ」の売れ行きが好調なソニーさんとのパイプもあるということなので、私はその申し出を受け入れました。

アシストを離れてその会社に入り、12万社の顧客を集めたのですが、ネットバブルがはじけて上場の話はなくなり、私は結局その会社を辞めることになりました。

そして2001年、私は東京・蔵前に事務所を借りて、女房と息子と3名であらたにビジネスをスタートさせました。それがマッチングワールドの前身である株式会社マチダ(2006年に社名変更)です。

「以前、会社を倒産させたあの町田がやっているのか」と、業界の人たちに言われるかもしれませんが、いくら名前を隠したところで、あとで同じことを言われるのはしゃくに障ります。ですから、町田という人間を応援していただける皆さんとのお付き合いを大切にしようと思い、私の名前を社名にしました。

「M-マッチングシステム」が注目され、倍々ゲームの成長を遂げました。

町田:株式会社マチダを設立して間もなく、アシストで働いていた5人の社員が会社を辞めて、「一緒に仕事をしたい」と行って当社に来てくれました。会社を立ち上げたばかりで資金繰りもかなり苦しかったですが、私を慕って来てくれたというのは経営者冥利に尽き、とても嬉しいことです。

「お金もないし、社員も増えたし、これからどうしようか」とあれこれ考えた私は、「どこにも負けないデータを作ろう」と決めました。これまで紙ベースで行ってきたファックスによる在庫マッチングサービスを、当時普及し始めていたインターネットを利用して行えるシステムの構築に取りかかったのです。これが「M-マッチングシステム」です。

ところが、当社のマッチングサービスに掲載されているのは格安商品情報で、なかでも目玉商品は早くおさえなければ、すぐに品切れになってしまいます。そのため、目玉商品を出品している業者が取引を始める時刻にネットのアクセスが集中し、システムがダウンしてしまうのです。こうしたBtoB特有のマッチングシステムにおける問題を解決するのに非常に苦労しました。

2018年7月現在、「M-マッチングシステム」は4代目ですが、過去のバージョンのシステムも残してあります。これまでに総額約2億円を投じて、商品を出品する側のお客様と、商品を買う側のお客様の要望を取り入れながら、改善を重ねてきました。

当初は外部業者に開発を依頼していましたが、お客様のニーズにかなう仕組みがなかなかできなかったため、システム開発を内製化。その結果、必要に応じて週単位でのシステム更新もできるようになりました。「ここをこう変更してほしい」という突発的な要望にもきめ細かく対応することが可能になり、絶えずシステムのブラッシュアップを重ねています。

こうした取り組みの結果、会社は文字通り倍々ゲームで成長を遂げました。金融機関も「M-マッチングシステム」に注目し、出資してくださるようになりました。

目指すはマッチングワールドの株式上場です。

リーマン・ショックで大きな打撃を受けましたが立ち直り、ふたたび成長軌道を歩んでいます。

町田:ところが、2008年にあのリーマン・ショックが起こります。当社もご多分に漏れず経営危機に陥り、上場が難しくなってしまいました。

上場準備のために外部から来てもらったメンバーには、しばらく給与を払って会社にいてもらったのですが、上場ができなくなったことを詫びたうえで辞めてもらいました。

加えてリストラを実施して部門を集約し、人員も減らして賃料の安い事務所に引っ越したりして、なんとか生き延びることができたのです。当時は苦しい決断の連続でしたね。

それでも当社を応援してくれる人たちが少なからずいた一方、「町田さんのところはもうすぐ倒産する」という噂を振りまく人たちがいたことも確かです。

ところが幸いなことに、その頃から海外取引が伸び始めていました。海外取引では商品を出荷する前に代金を前払いしてもらっていたので、資金繰りに苦労することなくビジネスを拡大することができたのです。その意味で、海外取引は、当時の私たちにとって女神のような存在でした。
 

3)経営者・町田博の生き方・ビジネス哲学に迫る

正直な話、会社が倒産したときに、どんなことを考えましたか?

町田:会社が倒産したときや、厳しかったときにも、極端な話、自殺しようとは思わなかったですね。それは、「商売したい」と思ったからです。負けん気が強いので、「厳しい時こそ頑張ろう、ここから抜け出そう」という気持ちだけは強く持っているのですよね。

というのも、前を向かないと誰も応援してくれないじゃないですか。社員もBtoBのお客様もついてきてくれません。応援してくれる人がいるからこそ商売ができるわけですし、応援してくれる人も、可能性があるからこそ目をかけてくれるのです。

加えて、二次流通業として初めて上場したいという思いもありました。今までに誰も成し遂げた人がいませんからね。

実際、大手メーカーが最近ハードを絞り込んだ結果、ソフトの流通が大きく減ったことから、二次流通業の倒産が多発しています。私たちには幸いM-マッチングシステムがあったので、影響をあまり受けなかったのですが、どんな場合でも先々を見た商売ができたらいいですね。

逆境の中でも這い上がることができたのはなぜでしょうか?

町田:さまざまな場面で、あるいは失敗をするごとに、良い人たちに出会うことができたからだと思います。実際、若かりし頃には、現金問屋の社長に出会ったおかげで、もっと上を目指そうという気持ちが湧いてきましたし、その後も長きにわたり、多くの友人にも恵まれました。もちろん、ご縁のあった銀行さんからも、要所要所で多大な支援をしていただいたことに心から感謝しています。

そういう人の縁のお陰だと思いますが、物事は、前に進んでいけば必ず何かに突き当たるのです。私には人を騙そうといった意図もなく、良い商売をしたいと思っているだけなので、その気持ちが通じて、皆さんに応援していただいているということなのでしょう。

もう1つは、現状に甘んじるのではなく、良い意味での欲を持つことが大切ではないかと思います。今の若い人たちは、自分がどうしたいということよりも、人のため、社会のために自分がどう役立つかということを考えていることが多いのかもしれません。

でも私は「欲なき人生」はよくないと思います。欲があったほうが、「ああしよう」とか「こうしよう」と物事を前向きに考え、動けるようになるからです。私自身も、欲があって「頑張ろう」と思っているのが本当のところで、欲がなかったら事業はできません。

逆に社長に欲がなかったら、社員たちは自分たちの欲、もしくは自分たちがこうしたいという希望を話しても聞いてもらえないと思うでしょう。だからこそ、社長が良い意味での欲を持ち、新しいことにどんどんチャレンジする人間であれば社員も楽しいでしょうし、それが社員の幸せでもあるとも思うのです。

町田社長が経営のうえで大事にしてきたものは何ですか?

町田:いかに社員を意欲的にするかということに尽きます。

社員は皆が自分の生活を持っていますから、1人ひとりの生活を大事にし、社員に極力負担をかけないように気を配っています。

たとえば当社では、社員が残業しないで早く帰ることを奨励しており、以前は社員の帰社時間を定めていましたが、最近は新型コロナウイルスの影響もあり、6時になったら終業にしています。。

また海外取引の関係上、勤務時間が不規則になりがちな海外チームについては、社員が自由に休暇を取れるようにしてあります。日本人はなかなか有給を取りたがらないものですが、当社の海外チームでは皆が有給を100%消化しており、「有給が足りない」という人もいるぐらいです。

給与についても、光陽時代から営業マンに対して成果に応じた報酬を支払い、やる気を高めてきました。

女性の活躍についてどう考えていますか?

町田:当社は女性が多い会社です。2018年8月現在、国内チームは6名中3名が女性で海外チームは7名が女性。ネット部門は女性と男性が3人ずつです。総務部門は2名とも女性です。

女性は几帳面で仕事が丁寧。マッチングサービスでは、お客様に営業をかけて受注を得るのではなく、お客様から依頼のあった商品を間違いなく手配し出荷することが大切ですが、男性は基本的に横着で適当な仕事をしがち。その点、女性はお客様から聞いた商品をきちんと手配しますから、マッチングサービスは女性に向いており、女性がいないと成り立たないビジネスだと思いますね。
 

4)マッチングワールドのこれから

マッチングワールドの今後について、どんな展望を描いていますか?

町田:企業には成長期、熟成期がありますが、当社の「M-マッチングサービス」は無事に成長期を迎え、前期から今期にかけて、成熟期に入ろうとしているところです。これまでの努力がようやく花開く時期を迎えようとしており、今後はサービスのシェア最大化に向けた取り組みを加速していきたいと思います。

一方、抗菌ガラスコーティング剤「ピカプロDX」の販売も順調に伸びています。ヨドバシカメラ様やワンダーグー様、Loft様などの大手店舗で取扱が開始されています。今後もより多くの店舗様にお取り扱い頂けるように営業活動を行って参ります。

また、たとえばネイルサロンで待ち時間やお客様がネイルケアを受けている時間を利用し、スマートフォンのガラスコーティングサービスを提供するというように、「ピカプロDX」は今後、異業種にも広がっていく可能性があります。「ピカプロDX」はゲーム機の画面のコーティングにも使えるので、ゲーム販売店などにも供給していきたいですね。

「努力する会社」という姿勢を大事にしている理由は何ですか?

町田:たとえばアメリカのように、ビジネスライクで努力はあまり関係がなく、値段だけで商売がほとんど決まってしまう国もあります。

でも日本では、売り手側と買い手側が、お互いにいろいろ話をし合い、一緒にお酒も飲みながら意気統合し、情も入って商売が進んでいきます。そういう中で、買い手側は、売り手側が一生懸命に努力した部分も見てくれるようになるわけです。

だから、同じ悩むにしても、私たちは一生懸命努力してとことん悩み、良い提案をしていこうと考えているのです。
たとえ結果は同じでも、「努力する会社」は、競合先が同じ結果を出す以上の「見えない努力」をしているかもしれません。

それはたとえば、業界について一生懸命に勉強し、市場の動向や価格などを見ながらビジネスの大きな流れを判断したり、それに照らして、既存の仕組みを改善するためにネットをどう活用していくか、ということなどを普段から考えることだと私は思います。

そういう、常に努力する姿勢があるかないかで、お客様に対する提案の質も大きく変わってくるでしょう。

「学習する組織」という言葉もよく聞きますが、学習とはある意味で受け身で、結果から学び、結果から物事を考えて行動することが多いのではないでしょうか。

もちろん結果から学ぶことは大事なことです。でも私は、むしろ結果にとらわれずに流通を開拓していく努力をするのが営業マンであり、結果ばかり考えていたら何もできないと思うのです。

ある意味で、結果を考えるということ自体、それだけ余裕があるということかもしれませんが、私たちには余裕がないので走り続けるしかありません。絶えず前向きに努力し、業界のさまざまな事柄を勉強し、提案を続けていくしかないと思っています。

「人のやらないことをやる」ことを信条にしているのはなぜですか?

町田: 昔から、中小企業から個人商店までを対象に、ファックスによるBtoBのマッチングサービスを長く手がけてきたことが今につながっています。言い換えれば、BtoBのチャンネルを築き上げてきたことが、当社にとって最大の差別化になっているわけです。

実際、商品1点1品からのマッチングサービスは、商社や大手業者が手を出せない分野ですが、「M-マッチングシステム」を使えば、買い手側の企業が商品を1品から仕入れることが可能です。

たしかに大手のEC(電子商取引)プラットフォームも、基本的に商品1点1品のプラットフォームではありますが、当社の「商品の番人」のような検品システムがありません。商品1つひとつについて検品を行い、商品を保証するのは非常に労力とコストがかかることですが、こうした見えない部分の努力は、なかなか消費者に伝わらないもの。だから業者としては手を出しにくいのですが、私たちはあえて、ここをしっかりやらなければならないと考えているのです。

このように、「人のやらないこと」の中には、じつは多くの人に必要とされていることが数多くあるはずです。だからこそ私たちは、潜在的に大きな需要が見込まれ、かつ、まだ誰も手をつけていない分野で、新たなサービスを提唱しているわけです。

今、どんな夢を抱いていますか?

町田:先にもお話したように、二次流通業者として初の株式上場を目指しています。現在、当社の年商は今期着地見込みが約70億円ですが、今後、売上高が100億円ぐらいになれば、上場も十分視野に入ってきます。

当社はまだ規模的に言っても、町田という人間がやっている個人商店のようなもので、商品の保証にしろBtoB取引の信頼性にしろ、「個人商店に任せていて大丈夫なのか」という不安を持つお客様がいても、何の不思議もありません。

一般に、上場すると資金調達の手段が広がり、人材獲得も有利になり、会社の社会的信用が高まるといった数々のメリットがありますが、当社としては何よりも、社会的信用が高まることで、「M-マッチングシステム」により多くの企業や副業・兼業事業者、フリーランスが参加してくれるようになることを期待しています。

もともと当社の「M-マッチングシステム」は完全匿名制で参加しやすいうえに、「商品の番人」で商品の保証も行うので返品がなくなります。加えて「マッチング・ペイ」により有利な条件で商品代金の支払いが可能になるなど、商品の買い手側企業と売り手側企業にとって数々のメリットがあります。

こうしたBtoB取引における安全・安心を高めるサービスの価値をより向上させ、社会的なポジションを高めることが、当社にとって上場を行うことの最大の意義なのです。

私は70代になりましたが、意欲だけは若い頃と変わりません。世間では史上最年少でIT企業を上場させた若手経営者が話題になりますが、ITのこともよく知らない団塊世代の人間が、史上最年長で株式上場を果たすというのも、痛快な話ではないですか。
 
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